お土産・おまけのエガミ(売薬版画)の図柄には、正月時期に合わせたものがよく見られます。
例えば、お正月の様子や、七福神・鯛・宝船などの福々しい図柄を描いたもの、翌年の干支を描いた暦や、火の用心のお札などです。
また、薬の宣伝広告物である引札も、正月に配布されることが多かったため、めでたく縁起のよいものを図柄に用いています。
富山の売薬さんは一年のうち、春・秋の二回商売に出かけていましたが、収穫が終わった頃に訪れる秋の商売は、得意先への年末の挨拶も兼ねていました。
「正月の風物」企画展では、秋の売薬商売の際に配る、エガミ(売薬版画)や引き札(薬の宣伝広告物)などの売薬関係の版画の中で、主に正月に配られる図柄を多数紹介しています。
火要鎮 大小暦 辛酉(かのととり)文久元年
大小暦とは、太陰暦で大の月(1カ月30日)と小の月(1カ月29日)を書いたものです。 これに火の用心(要鎮)の札が組み合わされています。
正月の配り物らしく、一富士、二鷹、三茄子のほか縁起物を描いています。また福神の手に鷹をとまらせて、今年は酉年ということを示しています。
火要鎮 大小暦 壬戌(文久2年)
江戸期は太陰暦を使用しており、29日と30日を組み合わせるほかに、閏年ではなく閏月をつくって、暦のずれを調整していました。
そのためこの年は閏8月となっています。この暦も正月らしく高砂の図柄です。
火要鎮 大小暦 己巳(明治2年)
これも大小暦に火の用心(要鎮)の札を組み合わせたものです。
図柄は注連縄(しめなわ)の下、門松の傍で羽子板を持っている和服の少女を描いています。
大小暦 明治19年、日曜表
この明治19年は戌年で宝船には明治19と戌年の文字が書かれています。
暦は明治5年に太陽暦となりましたが、曜日の感覚が定着していなかったのか、日曜日の日が書かれています。
明治43年日曜、大小暦 庚戌、故西郷隆盛君之銅像
戌年ということもあってか、戌を連れた西郷隆盛が描かれています。
暦は太陰暦の大小暦と、太陽暦を用いた日曜日の表の両方が載っている折衷の暦を使用しています。
正直第一金の成木 (明治中期頃)
鉢植えの「正直第一金の成る木」を持った女性と、恵比寿様が描かれています。 二人の着物の柄も松や鶴など縁起のよいものです。
恵比寿様は漁業・商売の神です。大福帳を新調するために表紙の文字を書いていますが、正月の書初めのようにも見え、新年の行事を表しているようです。
福神と鯛を図柄としたものは、売薬のおまけ・みやげの版画によく見られます。 画面いっぱいに描かれた、福神より大きな鯛は、めでたさの象徴であり、赤い色を多用しているのも人目を引きます。 正月に配られるのにふさわしい版画です。
熨斗とは伸した干しあわびで、和紙で代用され、祝い事や進物に用いられます。
これを絵で表したものが熨斗絵で、祝儀袋などに現在でも付けられています。
このような熨斗を一つ切り取って和紙に貼れば、祝儀袋になるような便利なものでした。また色とりどりの図で、千代紙のようにも使えます。
引札見本 無頼大勉強、特別大安売
引札は売薬だけでなく、様々な商売で作られていました。
このように印刷されている見本の中から図柄を選び、左側の空白に店の名前や商品名などを後から刷り込むものがありました。
引札 神丹、急活丸ほか調剤本舗 広貫堂
富山を代表する製薬会社となった、広貫堂の引き札です。
富山市売薬資料館へのアクセス ★住所 : 富山市安養坊980 ★電話 : 076-433-2866 ★開館時間 : 9:00〜17:00(入館は16:30まで) ★交通機関 : JR北陸本線「富山」駅から ・富山ミュージアム・バス…富山駅前CiCビル横から発車(※無料) ・地鉄バス…新桜谷行「安養坊」バス停下車徒歩5分、呉羽山老人センター行「富山市民俗民芸村」バス停下車すぐ ★入館料 : 大人110円 小人50円 富山市民俗民芸村全館 高校生以上630円 小・中学生320円
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